近江八幡 里山ハイキング ガイド

身近な自然、里山と関わることで豊かな生物多様性を保護しよう

里山について

里地里山は、奥山と都市の中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原等で構成される地域概念です。 農林業などにともなう、さまざまな人間の働きかけを通じてその自然環境が形成されることで生物多様性が維持されてきました。 里地里山は、さまざまな生きものを育んでおり、そのなかには絶滅のおそれのある種(希少種)が多く含まれています。 身近な自然とのふれあいの場、環境学習のフィールドとしても大切です。
しかし、近年は薪や炭がほとんど作られなくなるなど、二次林(雑木林)の経済的な価値がほとんどなくなっています。 さらに、農山村では過疎化のために手入れが行われなくなり、一方、都市近郊では開発が進むなど、里地里山の質の低下や消失が目立っています。

コナラ、アカマツの二次林としての里山

里地の中心をなす二次林は、薪や炭の材料として用いられてきたコナラ、クヌギ、アカマツなどから構成されています。 かつての二次林はおおよそ10~30年ごとに伐採されていたため、樹木は小さく、明るい環境が広がっていました。 このような二次林には、明るい林を好む花をつける植物が多く、それに伴って蝶などの昆虫がたくさん見られました。
ところが、燃料が薪から石油やガス・電気などに代わり、二次林の利用・伐採がなくなると、 木が大きくなってソヨゴやヒサカキなどの常緑広葉樹やササが増え、林は暗くなり、 生きものの暮らせる環境も少なくなっています。マツ枯れやナラ枯れなどの病虫害も年々深刻になってきました。
多様な生きものが暮らす山にするために、明るく、手入れされた二次林を作って保つことが大切です。

放置竹林

タケはタケノコ採取や竹材採取目的に農家の裏山などに植えられ大切に管理されていました。 最近では、タケノコの自給率が下がり手入れされていない竹林が増えています。 タケのなかでも成長の早いモウソウチクはタケノコから約1ヶ月で20メートルの高さに達し、 まわりの植物を日陰にして枯らしてしまいます。
タケの繁茂による林地が侵食されるなどの問題も大きく 侵食させたくない方向に伸びた根の根切りやタケノコを採るなどの管理を行わなければ、竹林が1年に最大3~4mの割合で拡大します。 しかし、川を越えられないこと、地面より深さ30センチメートル以内に地下茎が生えているために、 それ以上の深さの壁をつくると遮断できるなどの拡大防御方法があります。
拡大し続ける竹林は、これからの里山管理の上で最大の課題と言えます。

現状のまま竹林を放置するとどんなことが起こるのでしょうか。

竹の成長は、1年で5m地下茎が延びると言われ、他の樹木に比べて抜きん出て早く、地上茎は2~3カ月で15~6mも伸びます。 間伐などの管理をせずに放置すると、隣接の畑や山林に浸食。地上部を覆い尽くし、太陽光が入らなくなると他の草木を枯らしていく。 最後には林床が裸地化して地面がむきだしとなり浸食が起きてしまいます。

どんな影響が出るのでしょうか。

防災面では土壌崩壊の危険性があります。 竹や落ちた竹の葉には撥水性があり、雨水を溜めることなくそのまま下方に流れて行き、水源かん養などの森林が持つ公益的機能が奪われます。 環境面でいえば、腐葉土のない林地となり、いろんな動植物が生息する生物多様性も失われ、CO2吸収などの役割も果たさなくなってきます。

理想的な森林、里山とは、どんな状態でしょう。

複層林の混交林が良いと言われています。 簡単に言えば、樹種も樹齢も大きさも多様にあり、アカマツなどの針葉樹とコナラなどの広葉樹が交ざり合っているような森林です。 戦後すぐに国策として全国で行われてきた皆伐後の杉やヒノキの植林に代表される、一斉林も放置植林地の増加と相まって土砂崩れの原因など大きな問題となっています。 選んで伐採し、その後に後継種を育てる「択伐」を施して、高・中・低木・草木がある状態が理想的な林のかたちです。